成長経済の本質
社会保障制度の素晴らしさは、それが年金数理的な会計上は収支が均衡せず破綻しているという、まさにその点にある。引退する年齢に達した者は誰でも、自分がこれまでに払い込んだ額を遥かに上回る金額に相当する社会保障制度の便益を受け取れる。
一体、どうしてこんなことが可能なのだろうか?その理由は、国民所得が複利的に成長し、しかも可能な限りの将来にわたってその成長が持続するという事実にある。人口が増加する国では、若年者の数は高齢者の数を必ず上回る。更に重要なのは次の点である。実質所得が年3%で成長を続ける限りは、社会保障制度の毎年の支出を賄う課税ベースからの収入が、退職者が現役中に社会保障のために払い込んだ税額を大幅に上回るのだ。成長する経済とは、かつて構想された中でもっとも壮大な「ねずみ講」である。
竹森俊平『資本主義は嫌いですか』日本経済新聞出版社p83-4
(解説)
上述は、ポール・サミュエルソンが1967年に執筆した文章。応用哲学の一派として経済学をとらえてゆくと、その面白さが分かる。そんな、経済の面白さを教えてくれる好著である。哲学的に考えるとは、常に本質から物事を考える習慣を身につけること。練習をしてゆくと、物事の本質を見抜けるようになる。経済活動ではこれが大切。日常起こる種々雑多なニュースは、あくまで表面的なもの。その裏に起こっている本質的なものを理解しなくては、踊らされ流されて終わってしまう。
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「ねずみ講」の例え、なるほどと納得しました。
昨年秋、アメリカからの年次改革要望書の中のひとつに、「公的年金制度の破綻」が掲げてあったそうです。
そろそろ無理が出てきているとの解釈なのでしょうか。
「ねずみ講」ならば、いずれ破綻するのは目に見えていますね。